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劇団はぐるま座『雷電』岡山公演 「現代変えられる」と強烈な反響

  劇団はぐるま座の『動けば雷電の如く―高杉晋作と明治維新革命』は2008年に旧作を抜本改作して山口県、九州各県、中国地方などで公演を続け、多くの観客の反響に学びながら、劇団内部の演技路線をとぎすませてきた。12月の10日から3日間、久世エスパスホール(真庭市、昼夜2回)、美作文化センター(美作市)、久米南町文化センターで開催された岡山県公演は、現在の情勢のもとで発展する人人の意識と響きあい、『雷電』の舞台が新しい段階に発展していることを示した。それは反動の流れに抗して、平和で豊かな社会をつくろうとする、全国の人人の期待に大いにこたえるものになっていることを示している。
 
 高杉晋作と明治維新革命描く

 農林業を中心とした岡山県の県北地域の公演には、第1次産業に携わる人人をはじめ、飲食店や理美容院などの商業者、会社員、教師、小・中・高校生、家族連れなどが世代を超えて駆けつけ、舞台との激しい響き合いとなり、これまでの『雷電』公演で経験したことのない最高潮の熱気と高揚感に沸き立った。
 舞台は幕開きから客席の反応が様変わりした。『雷電』初演以来の3年半の間、一度も反応が出たことがない場面での相づちやすすり泣き、拍手があいついだ。終演後の見送りでは、とめどなく流れる涙を拭うこともなく「私たちの気持ちがすべて描かれていて勇気づけられた。この地で頑張りたい」と役者と固い握手を交わす若手農業者をはじめ、「全国で世直ししてほしい」と口口に語られた。
 ロビーでおこなわれた感想交流会には、中・高校生や20代、30代の青年、主婦や農業者、退職教師などが興奮冷めやらぬなかで参加。50代の女性は、「セリフではなく、演じている人たちの心、こみ上がる思いが伝わり、とても勇気づけられ影響を受けた」と語った。70代の男性は、「自分のために、自分さえよければとの利己的な考え方が多いなかで、農民や町人のために、みんなのためには命を懸ける、命は惜しくないとたたかった高杉と奇兵隊士の生き様に感動した。現代もこの心意気がいる」と興奮の面持ちで話した。
 また80代の婦人は、「今の日本を見るにつけ、日本も世界も沈没するのではないか、このままではどうなるかと思っていたが、劇を見て若い人が立ち上がっていけば絶対に変えていけると感激した。私たちの世代は、日本をどうするか本気でたたかった時代があり、この地域にも多くの斗士がいた。若い人たちに受け継いでほしい」とのべていた。女子高校生は、「今の時代も当時とあまり変わらないと思う。奇兵隊のように私たち若者も頑張らなければと思った」と清清しく語った。
 さらに劇を見た多くの人人が「今の時代も変えていける」「偉い人が時代を動かすのではなく、私たち1人1人に力があり、みなが団結すれば100倍、1000倍もの力を発揮する」と確信を語った。東日本大震災と原発事故以後の実際や、“平成の開国”と称したTPPなど徳川幕府顔負けの不平等条約で日本を売り渡し植民地にさせる流れに、「独立派が結集しなければならない」「命を懸けてたたかう精神を外国は一番恐れている」「今こそすべての人人が力を合わせて行動すべきだ」など、現実と舞台が呼応した強烈な反響があいついだ。
 また、それを導いた指導者としての高杉晋作の思想や葛藤、貫いた路線に対する共感、逆流が台頭する極限の場で諸隊と50万領民の力を信頼してたたかって時代を切り拓いた姿に、現代と直接に結びついた切実で激しい共鳴が渦巻いた。
 劇団内でもこれまでとの反応の違いは、驚きとともに、このような反響を呼んだ舞台の演技創造路線への確信が強く語り合われている。
 これまでの反応から、高杉と白石正一郎が奇兵隊結成について語り合い「同志の誓い」を交わす場面は、「照明が綺麗だった。星が輝いていた」など風景についての感想ばかりで、内容はほとんど印象に残らない場面というのが定着していた。ところが、「日本を上海のような植民地にさせるわけにはいかない」という場面などが進行すると、客席からはすすり泣きが起こっていた。また、「忠孝の枠を乗り越えて民族のために立たねばならぬ」と高杉が決起する萩脱出場面では、「詩吟が上手だった」という感想に終始していたが、高杉の「維新あるのみじゃ!」のセリフに拍手が起こり、「時代は家を守るワクを乗り越えて日本を守る」との場面への感想が多多寄せられた。
 現実社会の激動と人人の切実な意識が高まるなか、劇団内においてもだれのため何のための芸術なのか、人民劇団として果たすべき役割は何なのか―とくに演技創造路線をめぐって鋭く問われてきた。
 大衆の切実感に立ち、みずからを鍛え、時代の要求に合致した生命力ある舞台を真実の感情で描くのか、また大衆に役立つ舞台の創造者として、私心なく純粋に追究することで役割を果たしていくのか。そうではなくて、自分のひけらかしや自己主張、自分を目立たせたいという私心や我欲で、作品に描かれているテーマや大衆とおよそかけ離れた世界でウソの感情と手練手管の小手先で遊びの「芸術」を“それらしく演じて見せる”のか、鋭い対立となってあらわれた。それは、とくに高杉像をどのように描くのかをめぐって顕著にあらわれた。劇団員自身の生き方や全活動を貫く思想・立場とともに人民劇団としての真価を問うものだった。
 そして、今回の舞台を創造するにあたり、社会の主人公であり歴史を発展させる原動力である人民に奉仕し、人民とともにの大衆路線で劇団内の純化が進むなかで、リアリズム芸術の創造が発展し、舞台が質的に転換していった。それによって反響も様変わりし、大衆を激励し現実を動かす、新しい時代精神を描き上げる芸術として強固な支持と期待が寄せられるようになった。
 劇団はぐるま座は、『峠三吉・原爆展物語』とともに『動けば雷電の如く』の演技創造の発展に確信を持つとともに、『詩劇・礒永秀雄の世界』の創作を準備している。来年には創立60周年を迎え、日本全国の人人を結びつけ、戦争を阻止し、新しい日本を建設する力あるリアリズム芸術の人民劇団として大きな役割を果たすことを大いに期待させるものとなっている。

 アンケート 命かけ国守る志に圧倒

 ▼1人1人を大切に、皆を大切にが民主主義の要であり社会の基本である。地球的規模で今の情勢は憂慮すべき状態であります。今こそすべての人人がこのことを認識して力を合わせて行動すべきだと思います。ストーリーは今の民心を呼び起こすもので、時宜を得たものでした。見て見ぬふりをする今の風潮に警鐘を鳴らす。印象に残ったのは晋作が今の制度をこわして新しい世をつくるんだと叫んだことでした。他にも多くの教訓がありました。勇気と努力が劇団の宝だと思います。皆迫力に圧倒されていたようです。多くの人に感銘を与えること間違いなし。(84歳、久米南町)
 ▼現在の世相を思わせる感激ばかりでした。吟詠の場はじめ感涙にむせび続けました。「久びさのはぐるま座に逢ふよろこびと感激のみのけふの幸せ」(83歳、退職教師、真庭市)
 ▼このエネルギーだ。感動と勇気と努力。積極性、結束が日本の心を取り戻す。若い者が今後の日本の活動が、戦力と団結力が日本を救うもとになる。結束と団結、日本の明日を救う。(76歳、女性、久米南町)
 ▼熱演、大道具、小道具など本格的で表に出ておられない方方の陰の力も感じとても良かったです。印象に残ったところはたくさんあり、正確に覚えていませんが、命をかけて―、命を惜しまないで―、など、農民、町民を大切に考えられた晋作さんのことがよく分かりました。(74歳、男性、美作市)
 ▼まさに日本の夜明けそのものでした。迫力があり訴えるものがヒシヒシと胸に伝わりました。「50万民の力」。吉田松陰の言葉、TPPに通ずるものがありました。最高の演技ありがとうございました。(67歳、農業、久米南町)
 ▼いつの時代にも世の中は変わるということ、命懸けの決意、志を感じる。(67歳、男性、美作市)
 ▼敗戦時の米軍の教育改革により60年後の現在、日本の魂は失われてしまいました。高杉晋作のような熱い若者がたくさん出てくることを期待します。「不忠不幸」。草の根運動で公演頑張ってください。(65歳、男性、美作市)
 ▼迫力ある演技すばらしかった。維新の激動をかけぬけたパワーはどこから発するのか考えさせられた。「下からの団結」。敗戦時の講和での高杉晋作の反論が印象に残った。(64歳、農業、久米南町)
 ▼伝えたい民衆の心がよく表現されていた。最終の場面は感動的であった。津山公演も観させていただいたが今回はさらに洗練された劇になっていたと思う。農民の力を示す迫力にすごみがある。(55歳、男性、真庭市)
 ▼力一杯の演劇に感激しました。命をかけてたたかう精神、国を守るために命をかける志の高さに感動。何のために生きるか、どのように生きるか、何が大切かを考えさせられました。すばらしい人格に感動でした。(54歳、女性、真庭市)
 ▼現在の日本の状況とオーバーラップしていて、この時期に公演活動をしている意味がわかります。独立派と植民地派(売国派)とのせめぎあいで国論が割れているTPP等、独立派が結集しなければいけません。元気の出る劇でした。高杉晋作とはそういう人だったのですか。(53歳、農業、真庭市)
 ▼大作、見ごたえのある劇でした。高杉晋作の偉業がよくわかり、日本を代表する偉人ということを改めて再認識いたしました。吟詠がとても良かったです。高杉さんはまさに雷電でした。(53歳、教師、美作市)
 ▼劇全体に命をかけてたたかっているのに笑い声が聞こえて元気が出て良かった。今までの江戸幕府というものが国を保つ力を失って、新しい考え方や力をもった国をつくり維新という力で一つの外国と肩を並べる国を目指した人人の力強さを見たような感じがしました。「むやみに田畑を荒らしてはならない」というように奇兵隊の隊則が心に残っています。(28歳、男性、農業、真庭市)
 ▼今の日本も同じような感じなので奇兵隊のように私たち若者も頑張らないといけないなと思った。(女子高校生、美作市)
 ▼とてもおもしろく、高杉さんの心強さがとても伝わりました。最初の場面で高杉さんが『男なら』を歌い踊るシーンがとてもゆかいで楽しそうで、おもわず手拍子をしました。後半の奇兵隊が勝利を手にしたシーンがとても感動しました。(14歳、女子中学生、真庭市)
 ▼郷土人と郷土を守ること、劇に感じ入りました。郷土と土地に根ざして、外国を利用せず外国に依存することのないわが国の方針を示す劇を、今後とも続けてもらいたいと思います。(久米南町)
 ▼登場人物のせりふ回し等、洗練されていて筋がよく理解できました。古き良き日本の姿。―礼儀、思いやり、忠義等を教えられました。「維新あるのみ」「親を捨て、子を捨て、なんぞ悲しまん」「人民安堵」質の良い演劇を観ることができありがとうございました。(女性、美作市)
 ▼見応えがあった。パワーをもらいました。日本にパワーを、是非与えると思います。山口県の力を知った。(会社員、女性、真庭市)
 ▼民族の独立のため、国の夜明けをみるためすべての人人が協力している様子がわかりました。農民の力で日本の夜明けが見えてきた。民族の独立を守り抜いた。「命をかけてたたかうことを外国はおそれている」「身分を問わずに自由な武装」「財のある者は財を出し」「平等な立場で開国する」。(久米南町)
 ▼時代は家を守るワクをこえて日本を守る。「古い世界には戻れぬ維新あるのみ」「話してわからんなら行動で動かす」「諸君俺に命をあずけてくれ!!」。舞台や音楽がきれいであった。グレードの高い劇団と思われました。(真庭市)
 ▼面白くもない世の中を若者達でにぎやかに苦しい時代を切り開いたことは、現代の苦しい時代(災害や国政)も克服できるものと感じました。志を同じゅうする者がつどい結集すれば100倍にも1000倍もの力になる! 「潮の流れは上辺と海底ではまったく逆である」「今や古い世界に後戻りはできない」。(女性、美作市)
 ▼百姓がコメを持参した時の場面とセリフに涙が出た。高杉さんのやさしさ、とても上質な演技でした。熱心に演じて解りやすい、良い舞台、ストーリーなのでもっともっと多くの人達に見てほしいと思います。(美容師、美作市)
 ▼今の日本にも通ずるところがたくさんありました。農民たちがいたからこそ、成しとげられたということがとても伝わってきました。今こんな時代だからこそ、こんな劇を多くの場所で演じて欲しいです。(美作市)
 ▼現代もこのように1人1人が考えを強く持てば日本も変わると思いました。(真庭市)
 ▼上手くいかない世でも、みんなが力をあわせればきっと上手くいくことがわかった。高杉の覚悟が良く伝わった。(真庭市)
 ▼明治維新時の長州藩の様子がよく伝わり、新しい世の中を目指そうとする農民たちの熱い気持ちが心に響きました。吉田松陰先生の教えは現代の子どもたちにもぜひ受け継いでほしいと思った。(真庭市)