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本物の維新革命を大阪に届ける 劇団はぐるま座『雷電』公演

 【関西】 劇団はぐるま座の『動けば雷電の如く―高杉晋作と明治維新革命』大阪公演が、19、21日にクレオ大阪東(城東区)、クレオ大阪中央(天王寺区)の2カ所でおこなわれ、関西一円、全国から労働者、農民、戦争体験者、教師、大学教官、高校・大学生などが観劇した。関西初の『雷電』公演となった今回のとりくみでは、戦後70年を迎えるなかで、「世の中が戦争に向かっているとき、頑張らなければ」「本物の維新革命を大阪に広げよう!」「市場原理ではなく社会的利益でみんなが力をあわせ、地域や世の中を盛り立てていく力にしていきたい」と論議が活発化。劇の内容への熱い共感とともに、現代の日本、大阪を重ね、戦争政治を打開していく力になる公演として、世代や業種をこえ熱を帯びて広がった。また橋下市政を筆頭にした市場原理主義の紛い物“維新”とたたかう「本物の明治維新革命」を描いた劇として大阪府民に歓迎され、大きなうねりとなって響きあう公演活動となった。
 とりくみの過程では、市内にポスター約1300枚が貼り出されると同時に、宣伝活動が各種の催しや会合などで快諾され、精力的に展開された。市仏教会と老人会が主催する花まつり、仏教会主催の花まつり講演会では、チラシ合計1800枚を配布。城東区菫連合の桜まつりでは、約2時間半のあいだに計4回の紙芝居を上演し、のべ200人が鑑賞した。
 教育をめぐっては、大阪で先行しておこなわれている教育長の首長任命制に対して市民の反対世論が圧倒するなかで、教育長、教育委員長を辞任に追い込んだことが論議となり、政治と教育を直結の体制にすることへの強い問題意識が語られた。学校現場では、市立高校の民間校長が学校の伝統や子どもの教育を無視した教育を進めていることに、父母や教師のなかで激しい怒りが語られていること、そのなかで「どんな子どもを育てるのか」との意識と響きあい、観劇の呼びかけが広がった。
 また剣道や空手を通じて青少年教育に携わる指導者が共感し、道場での紙芝居会もあいついでおこなわれた。天王寺区の空手道場では40代の指導者が、「“仲間を大切にすること、自分の過ちを認めて良い所を伸ばす、礼儀を重んじ生活する”という心得と、劇で描かれていることが通じる」と語るなど、多くの青少年教育関係者に支持された。
 港湾関係や生コン関係など、労働者のなかでも積極的なとりくみが進んだ。民間会社で働く労働者は、「前回の『原爆展物語』公演を観劇したさい、市民と結びついた運動が労働運動の本当の姿だと思った」と当時の感動を語り、今回の公演についても、「明治維新に至る過程でさまざまな諦めや逆流が起こったとあったが、今もその小型版のような共通するものがある」とのべ、「自分たちと同じ方向で頑張っている劇団」との信頼のもと、誘いあって観劇した。
 また医療関係で働く男性が、「医療保険がどんどん削られ、安倍が暴走している。親が保険証を持っておらず、子どもたちが歯医者にも病院にもいけない家庭が増えている。こんな社会ではダメだ。劇の農民たちのセリフと重なるものがある。もうみんな我慢の限界にきているなかで、労働運動の道筋を示してくれるような劇だと思う」と語り、仲間に声をかけ観劇を呼びかけるなど、宣伝活動が活発化していった。
 さらに明治維新観をめぐって論議が発展。各地で、「明治維新後の戦争に突き進んでいったことについてはどう見るか」「橋下が喜ぶのではないか」などの問題意識が語られるなかで、「今回の舞台は、民族の独立と世直しをやっていった本物の明治維新を描いている」と説明すると強く共感して歓迎され、「ありがとう」と立ちあがって礼をする人、熱を込め観劇を呼びかける人など、深い信頼が広がった。
 表立ってはいえない抑圧感もあるなかで、「最近“維新、維新”と騒いでいるが、自分は“維新”には反対の人間だ。今日実行委員会ニュースを読んで話がしたくなった」と劇団事務所に電話がかかったり、老人会長の男性が、「橋下市長はとくに老人会や子ども会の補助金をバッサリ切った。市交通局も300億円の黒字が出ているにもかかわらずさらにもうけようとし、大阪市の介護保険料は日本一高いことでも有名だ。老人憩いの家も使用料を徴収するようになり、老人会員に対しては無料だった大阪城や動物園の入場・入園料もとるようになるなどもってのほかだ。橋下市政に対する抵抗を演劇を通じてやっていくというのは大賛成。できるだけ多くの人の参加に結びつけたい」と語るなど、現状変革とかかわった論議が進んだ。戦時体制づくりのもとで、橋下市政を筆頭に市場原理主義がはびこるなか、抑圧感をはねのけ、下から市政を突き動かす運動と結びついた熱いとりくみが発展した。
 実行委員には大学生をはじめ労働者、小学校PTA役員や学校評議員、また小学校・高校教員など教育関係者、女性会役員や老人会、町会など地域活動に携わる人人、文化関係者など25人が名を連ねた。

 公演後の座談会 団結すれば勝てる確信

 初日の19日は、クレオ大阪東で昼公演がおこなわれた。開演に先立って実行委員の藤村彰宏氏(高校教員)が「この劇は幕末維新の社会変革のもっとも重要なところを切りとって凝縮し、庶民の経験した歴史、本物の歴史を描いている。現代を生きていく意味を考えるきっかけにし、先人たちの輝かしい業績に誇りを持ち、その苦労や努力に思いをはせてほしい」と挨拶。舞台の幕が開くと、観客は迫力を持って展開する劇が進むにつれて引き込まれ、終幕では惜しみない拍手が送られた。
 感動と興奮がさめやらぬなか、会場ロビーで座談会がおこなわれた。
 60代の高校教師は、「初めて観たが、民衆の描き方、米俵を持って来て証文を渡すところは感動した。今までの歴史の描き方をみると幕府が正義派と俗論党を争わせていく残酷な場面、功山寺決起のギリギリの緊張感、高杉が悩みながら行動するところなどは描かれていないが、それが今回の舞台では描かれていた。テレビは突っ込みが足りない。はぐるま座がどんどん好きになっていく」と語った。
 40代の労働者は、「『峠三吉・原爆展物語』もそうだったが、はぐるま座の劇は大衆の観点から描かれている。今回も民衆サイドから描いている。テレビなどは支配層の側の観点からだから描き方が違う。こういう描き方をするところはなく大変貴重だ。大衆の立場に立って物事を考えていくのは自分たちの労働運動と共通する」と思いをのべた。
 京都から観劇に訪れた60代の女性は、「改作を重ねてきたと聞いていたが、今の日本が描かれていると感じた。美しかったのは百姓の女たちの場面、米を運んできて証文を渡されるところでは涙が出た。今の社会が本当に戦争に向かいそうな状況にあり、子どもたちにどんなことを残していけるのか、“絶対に阻止しないといけない”という思いを強くしているときでもあったので、大事なときに大切なことを教えられた」と感想を語った。
 60代の労働者は、「時代背景や目的、また戦略や戦術は違うが、オール沖縄で米国に追随する日本政府とたたかっている沖縄の人人の姿とダブって見えた。弱者は一人一人は微力だが無力ではない。団結すれば勝てるということを教えられた」とのべた。
 名古屋から訪れた70代の男性は、「テレビで『花燃ゆ』も見るが、その場その場では“そうなんだ”と感心もするが感動ではない。感動は10年、15年後にも残っているものだ。それだけ続くものが本当の感動であるし、この舞台からそのことを再確認した。名古屋から来たかいがあった。正しいことは全国に伝えるべきだ。頑張ってほしい」と激励した。
 21日にクレオ大阪中央でおこなわれた夜公演のカーテンコールでは、会場から「頑張れ!」と声援が飛び、会場が喜びに満ちあふれた。終演後の見送りでは、労働者たちが感動の思いを語り、「労働者として団結して一緒に頑張りましょう!」と熱く語った。また「公演を観て今後の生き方が変わります!」と語る60代の夫婦、満面の笑顔で「すごく良かった!」と語る高校生たち、遠くは下関や京都から駆けつけた人人など、観劇した人人の喜びの声が多数寄せられた。2015